革新的な次世代航空機概念(次世代環境適合型旅客機,静粛超音速輸送機など)について,主に空力的な研究と形状の提案を行っています.効率的に最適な形状を導き出すに,設計要求から検討行った機体に対して数値流体力学(CFD)と遺伝的アルゴリズム(GA)による計算機を援用した多目的設計探査法を用いています.また,構造重量の推算なども連成させた多分野融合設計にも取り組んでいます.
輸送機の主翼境界層を層流に保つことができれば摩擦抵抗の大幅な低減の結果25%程度の燃料節約が可能であり,主翼境界層の層流化は重要な空力技術研究課題と考えられてきました.また最近では,環境適合の観点から,空気抵抗低減のみならず,翼や機体から発生する空力騒音の低減も避けることができない空力技術課題としてさらに重要視されていますが,空力騒音低減のためにも流れの不安定性や乱流遷移の知識は不可欠です.本研究は,このような背景を踏まえた乱流遷移の基礎研究であり,航空機の空力性能や機体空力騒音に大きな影響を及ぼす境界層遷移の制御とそのための遷移予測精度向上を目指しています.また,層流化制御の努力をより現実なものとするために,翼製作上避けることができない表面粗度の問題にも取り組み,壁面粗さが境界層の不安定性に及ぼす影響を理論・実験・数値シミュレーションにより調べています.
航空機の空力騒音の低減は,次世代航空機開発において最も重要な空力技術課題の一つです.エンジン性能の向上とともに機体騒音が顕在化し,とりわけ,着陸時においては,脚部や展開されるスラット・フラップなど翼の高揚力装置から発生する空力音が機体騒音の主要因となりつつあります.ここでは,翼から放射される空力音の発生機構や空力騒音の抑制制御に関する詳細な実験研究ならびに数値実験を実施し,次世代航空機の設計開発に必須の空力騒音低減に貢献します.